前立腺は男性だけにある臓器で、恥骨の後方、膀胱下側の尿道を囲むところに位置する。前立腺の仕事は、精液の一部である前立腺液を分泌することである。前立腺ガンは、前立腺を構成している腺細胞の悪性化によって発生する。
前立腺ガンは、明らかに「高齢者のガン」である。50歳を過ぎる頃から年をとるとともに発生しやすくなり、80歳以上では2人に1人が前立腺ガンを抱えているといわれる。もともと欧米では、前立腺ガンはガンによる男性死亡者の20%を占めるほど多い。日本も高齢者が増えるにつれて確実に前立腺ガンの患者は増えている。ただし、前立腺ガンの多くはおだやかで症状もなく、進行がゆっくりなため、共存共栄で寿命をまっとうすることも少なくない。
【前立腺ガンの危険が高い人】
▲年齢(加齢とともにリスクは高くなる)
▲男性ホルモン
▲遺伝的素因
▲脂肪分の多い食事
▲緑黄色野菜の不足
【前立腺ガンの症状】
前立腺ガンは、初期には症状はほとんどない。前立腺ガンが進行し大きくなると、近接する尿道や膀胱を刺激することによって、次のような排尿障害などが発生する。
▲排尿困難(尿が出にくい)
▲頻尿(尿の回数が多い)
▲残尿感(排尿後、尿が残った感じがする)
▲尿意切迫(尿意を感じるとトイレに行くまでに排尿をがまんできない)
▲下腹部不快感
▲痛み
▲血尿
▲尿閉(ガンが尿道を閉塞すると尿が出なくなる)
*前立腺ガンと前立腺肥大の症状は似ているので、症状だけで判断せず受診すること。
【前立腺ガンの検査】
■血液検査
血液中のPSA(前立腺特異抗原)を測定する。PSAは精度の高い腫瘍マーカーである。PSAは前立腺ガンでは高値を示すが、前立腺肥大、前立腺炎でも反応するので、他の検査を併用して確定診断とする。自治体によっては、PSA検査を前立腺ガンの集団検診として導入しているところもある。
■直腸診
肛門から指を挿入して、直腸の壁越しに前立腺に触れて診断する方法。指先の触診によって前立腺ガンか前立腺肥大かを鑑別できる。一般的に前立腺ガンの場合は、夏みかんのように表面がでこぼこになる。
■超音波検査
肛門から直腸に超音波発信器を入れてエコーによる画像で診断する方法。潜水艦が敵を探知するソナー技術を応用している。
■前立腺生検
前立腺組織を採取し、顕微鏡で調べる方法。
【前立腺ガンの病期】
前立腺ガンは「ウイットモア・ジュエット分類」によりA・B・C・Dの4段階に分けられる。
A:良性病変(前立腺肥大など)ろの診断で手術を受け、切除された組織に偶然前立腺ガンが見つかった「偶発ガン」
ガンが切除した組織の5%以内なら→A1、5%以上なら→A2
B:ガンが前立腺内にとどまっている(早期前立腺ガン)
前立腺の結節が片葉→B1、結節が両葉→B2
C:前立腺被膜を越えて浸潤している進行前立腺ガン(転移はない)
D:転移を伴う前立腺ガン
リンパ節転移→D1、リンパ節、骨、肺、肝臓など遠隔転移がある→D2
【前立腺ガンの標準的治療】
■ホルモン療法
前立腺ガンの基本的な治療法である。前立腺ガンは男性ホルモンの影響で成長すると考えられている。男性ホルモンを抑制するために、抗男性ホルモン剤、女性ホルモン剤、LH-RHアナログ剤などを内服、注射する。
■手術
前立腺被膜内にとどまる比較的早期の前立腺ガン(病期A2~B)に適応される。
■放射線
早期の前立腺ガンには根治を目的として、進行の前立腺ガンには病状の緩和および進行を遅らせる目的で用いられる。
(*関連記事「トモセラピー」)
*高齢者(70歳以上)で、悪性度の低い前立腺ガンなら、経過観察だけの場合もある。


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