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口の機能回復 舌切除 装置付け食事 
読売新聞 2011/08/23)

舌がんの手術で舌を切除した女性。下の歯の内側に見える透明のプレートで舌の働きを補う 東京都港区の女性(69)は2005年12月、都内の病院で舌がんの手術を受けた。舌のほとんどを切除し、舌の根元だけが残る。

舌がないと、食べ物を口の中でまとめられず、うまくかみ砕けない。口の奥に食べ物を押し込み、のみ込むこともできない。このため、女性は退院時には、腹部に穴を開けて、チューブで胃に栄養剤を送る「胃ろう」が設けられた。

その後、昭和大歯科病院(同大田区)の口腔(こうくう)リハビリテーション科に通った。当初、口では一切食べられなかった。おなかの胃ろうの弁を見られるのが嫌で温泉にも行けない。弁の定期交換も痛い。「胃ろうを外すこと」が目標になった。

同科教授の高橋浩二さんらは、上あごと下あごの内壁を厚くするプラスチック製のプレートを作った。これを歯にかけて装着すると、短い舌でも上あごに触れやすく、食べ物に圧力をかけやすい。女性は、この装置を使って流動食を飲み込む訓練を始めた。

食べ物が誤って気管に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎になったこともあるが、次第に流動食なら口で十分食べられるようになり、09年10月、3年半ぶりに胃ろうを外せた。

 「本当にうれしかった。今は東京近辺のあちこちの温泉を楽しんでいます」

言葉の発音に障害は残るが、言語聴覚士の指導や孫とのおしゃべりのおかげで、今では電話に出られるまでになった。

上あごにはめるプレートは昨春、口腔がんなどの患者の「舌接触補助床(ぜつせっしょくほじょしょう)」として保険適用された。しかし、この治療を行う歯科医はごくわずかで、装置の存在もよく知られていない。

東京都国立市の男性(70)も昨年末、都内の大学病院で舌の左側3分の2を切除した。手術後は軟らかい物を食べていたが、今年3月、誤嚥性肺炎になった。栄養が十分とれず、65キロだった体重が50キロに落ちたため、鼻から胃に栄養剤を送るチューブを入れられた。

 「味がなくて、食べた気がしない。精神的に追いつめられた」と振り返る。

そんな時、本紙で舌接触補助床を知った。日大歯学部病院(東京都千代田区)摂食機能療法科長の植田耕一郎さんを受診し、現在、補助床の調整中だ。

男性は「こんな方法があるとは、手術した病院では聞かなかった」と話す。

ただし植田さんは「装置を作っても必ず食べられるようになるとは限らない。手術後、患者の口の機能は変化するため、私たちもそれに合わせて試行錯誤しています」と話している。




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