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ガン患者さんのご家族や親しい方へ

死生観

金子稚子さん講演会(流通ジャーナリスト故・金子哲雄夫人)

死ぬことと、生きることは、同じ
2013年11月 岐阜市にて
2013年11月10日、岐阜で金子稚子(わかこ)さんの講演会が開かれました。マスコミでブレイク中だったご主人の金子哲雄さん(流通ジャーナリスト)は、肺カルチノイドのため昨年10月に41歳で急逝されました。稚子さんは、雑誌や書籍の編集に携わる傍ら、哲雄さんとともに「命の始末」と向き合う経験から得たことを伝える活動をされています。それは哲雄さんからの“引き継ぎ”でもあるのです。
(講演会の主催:一般社団法人 健康支援ディアス

当日の講演で印象に残った部分を記します。

金子哲雄 金子稚子
金子哲雄さん、金子稚子さんの著書 阿川佐和子さんとの対談記事が掲載された週刊文春(11月14日号)



【終末期の在宅医療ついて】

在宅で看てほしいなら、その希望をしっかり伝えること。家族の希望ではなく、本人の希望を伝えること。現実は、多くの方が本人の希望を代弁しています。「きっと、○○だろう」 それは物凄く怖いことなのです。とくに家族が(本人から)聞くことは、本人の本当の希望とはちがうことがあります。

家族は、患者である自分が亡くなった時に、そして今この瞬間も、いちばん迷惑を掛けている存在なのです。私(に対して)もそうでした。でも近くにいてほしい。相反する気持ちを常に抱えているのです。すごい迷惑を掛けている、でも傍に居てほしい。だから弱音を吐きたくても吐けない。家族が夫と息子というシチュエーションの女性なら尚更です。面倒をかけるから病院に行くわ、と仰る方が多いです。でも本心は、家の、自分の使いなれた布団で死にたいという方が多いのではないでしょうか。

その身内には言いにくい本心は、医療関係者、福祉関係者、ご友人など第三者のほうが聞きやすい。ですから、家族は自分たちが思っていたこととちがう本人の願いを第三者から聞かされたとしても、無下にしないでください。肉親の本当の気持ちを聞けるのは、自分ではないかもしれないという前提を受け入れてください。

私たちの助けになったのは、事務所のマネージャーの存在です。金子が病気を隠していたのは、心配をかけたくないという思いだけでなく、病気を公表すると仕事が減ってしまうからです。それは金子にとって耐えられないことでした。仕事をすることは、病気ではない自分を確認できる作業だったのです。それを担ってくれたのがマネージャーでした。

終末期の人にとってキツイ言葉があります・・・「がんばって」「あきらめないで」「希望」金子は「がんばって!」という声掛けをしてほしくないがために限られた人としか会いませんでした。患者本人が会いたくないと言ったら、お見舞いの申し出があっても断る勇気を持ってください。患者本人の意思ですから。

1年半かけて死ぬということを理解して、ある死生観を持ちました。「がんばって!」と言われた時、その死生観を説明することの困難さ、労苦から金子は(人に会うことを)勘弁してほしかったのです。それでも金子の同級生に、金子が死に面していることが漏れてしまったことがありました。血相を変えて飛んできた彼らは、「金子、がんばれ!がんばれ!」をやるわけです。彼らが帰った後、金子と私は二人で泣きました。あまりにも理解してもらえないことが、厳しくて・・・。

「あきらめるな!」 最期の最期までファイティングポーズを崩さず闘い続ける人もいます。その人の場合も、その方の意思を最優先してあげてください。けれど金子はちがいました。死ぬってわかってから1年半、たいへんな衝撃を乗り越えやってきた人生を全否定されているような感覚になるのです・・・この期に及んでの、死ぬ間際になっての「あきらめるな!」という言葉は。それだけ「がんばれ」「あきらめるな」は、この時期の患者にとってはキツイ言葉なのです。

それに対して家族は、その言葉を口に出さずに付き添うのです。家族にとって、それは物凄くキツイ・・・厳しい・・・。この状況が嫌だから病院に任せてしまう方もいらっしゃるんじゃないかな・・・ちょっと思います。もしかしたら、大切な人を失う怖さでそのような言葉を発してしまうのかもしれない。

「家族の立場としてそんなに強くなれない」そう思われるかもしれませんが、大丈夫です。というかそれを乗り越えた後、死後がちがいます。まったくちがう。はっきり言えます。それくらい最期の時間を伴走し、しんどくても寄り添い切れると、言い方は悪いですが素晴らしい経験になると思います。

もうひとつ。終末期の方に対し「希望」という言葉を軽々しく使わないでください。「希望」は、あまりに明る過ぎる、眩し過ぎる、大き過ぎる言葉だからです。希望をもう少し分解してみましょう。希望は「楽しみ」であったり、「喜び」であったり。寝たままでできる趣味や、好みの味付けの食べ物を口にして幸せだ、というようなことでいいのです。

皆さま、身近な方が(がんのような)病気になると、その人が先に逝くと思いますよね。でもわからないですよ。お父さんにがんが見つかって闘病していたところ、奥さんが末期のがんで先に亡くなった、というケースもあるのです。どっちが先に死ぬかなんてわからないです。もし自分の命があと2週間であったとしても、死にゆく人が残せることがあります。自分の意思を伝えること。

たぶんそう大そうな事ではなく、ちっちゃな事、実現可能な事です。それを実現するために努力する、支援する、やれた。その達成感が残された人にどれほどの勇気と力を与えることか。

死を前にして、こうしたいという自分の意思を決めることは物凄くたいへんな事です。人が死を前にした時に鍵を握るのは家族です。死んでほしくない、死んじゃいやだ、と失いたくないから自我が出ます。でも死もまた本人のものです。その命は本人のものである、ということ対して勇気を持ってほしいのです。たとえば医療を止める局面が来た時、周囲からはいろいろ横やりが入ります。でも本人が望んではっきり意思表示をしているのであれば、それを実現する勇気を家族は持ってほしい。そして医療者は福祉関係者はそれを実現する支援をしてあげてほしいのです。ご本人、ご家族を支えてほしいのです。


【死生観】

金子が今日死ぬということは、私にはわかりました。父の死、金子の死、いずれも病院ではなく自宅で迎えました。死の瞬間というのはテレビドラマのように、医療器械の波形が変わってという目に見えるはっきりしたものではありません。いうならばフェイドアウトのようなものですから、死ぬ間際にお別れはできない。お別れはその前に本当は済んでいるものなのです。

そして、死は決して終わりではない、ということを知ったのです。こちらから線一本向こう側に移るだけで、しかもその境界線は曖昧なものである。

私の父も在宅で看取ったのですが、その体験も踏まえ、金子は「死ぬことと、生きることは変わらないね」「あの世って、この世とあんまり変わらないんじゃないか」と言い出しました。「僕は向こうでやるわ!」 なので『僕の死に方 エンディングダイアリー500日』(金子哲雄 小学館)の巻末に入れさせて頂いた会葬礼状に「第二の現場では・・・」と書いてありますが、あれは金子と私の本心です。

「死=終わり」「死=無」という死生観をお持ちの方もいらっしゃいます。でも私は、そのような死生観はつらいだけだな、と思います。私の感覚では、死はあの世側に移るだけ、亡くなった方とは新しい関係になるだけなのです。

余命1ヶ月を宣告された、ある白血病サバイバー、白石いづみさんという女性ですが、講演劇というのをされています。同病の仲間が何人も亡くなっていく体験をされている。彼女は演じている最中に、明らかに亡くなった病友の感覚を感じたと話してくれました。演じながら感じたわくわくした感覚は、自分のものではなく明らかに友だちのものだった。その体験から彼女は「亡くなった友だちの分まで、私、太く濃く生きるね!」という台詞を「亡くなった友だちと一緒に、私、太く濃く生きるね!」に変えた。

死というのは大きな流れのなかの一つの通過点に過ぎない。通過して関係性が変わるだけで、終わりではない。それを残る人も死ぬ人も認知しておくだけで、死後の準備はもちろん、今の「生」も変わってくると思います。

『死ぬことと、生きることは、同じ』


◆金子哲雄さん、金子稚子さんの著書






【編集長感想】

「ガンの辞典」開設以来、はじめて、お亡くなりになった方とご遺族の方のメッセージを掲載しました。ガンの辞典を閲覧される多くの方は、現在がんと格闘中で治すための情報を必要とされている。そのニーズを踏まえ、今までは治すことや生きることに関する記事の掲載に限定してきました。闘病記や体験本の紹介も、亡くなった方のものは避けました。

しかし、ガンの辞典に設定した主題は【がんであっても、どんな状況でも人生を全うする】です。また多くの方からがん体験を伺ってみると、がんを治すにも、がんを抱えて生きるにも、治すことは諦めるが生きることは諦めないにしても、死から目を背けたり、死を無暗に忌み嫌っていては、本当の意味で、がんに対して、自分の人生に対して前向きになれないことがわかりました。(がんになった方だけの問題ではありませんが)

人の死亡率は100%です。死と向き合うこと、死生観を持つことによって、いのちはいっそう、輝きを増すことになると思います。

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