
放射線や抗ガン剤は、がん細胞を攻撃すると同時に、正常な細胞にも影響し、いろいろな副作用を生じます。今回は、これらのうち、治療の副作用として発生したがん、すなわち「治療誘発がん」に注目します。
一度がんを患った後、時を経て、別のがんになることがあります。以前は珍しいとされましたが、治るがんが増え、がんを見つける検査が進歩した現在、少しも珍しくありません。
この二つ目のがんを総称して、「二次ガン」といいますが、これには「自然に発生したもの」と「過去の治療に誘発されたもの」が含まれているわけです。
けれど、自然界には、もともと放射線や化学物質など、発がんに関与するものがたくさんあり、様々な因子が絡んで、がんが発生します。ですから、がん治療を受けた人に二次ガンが発生した場合、それが放射線や抗ガン剤などに「誘発されたがん」か、治療と無関係な「自然発生がん」か、細胞を調べる顕微鏡検査でもわかりません。
ただ、ごく若いうちに、リンパ腫(しゅ)や睾丸(こうがん)腫瘍(しゅよう)など、放射線や抗ガン剤でよく治る病気になった人を大勢集めてデータを取ると、同年代の一般の人たちと比べて、中高年になってからのがん発生頻度が、明らかに高いことが確認されます。
欧米の研究で、睾丸腫瘍で放射線治療や抗ガン剤を受けた4万人あまりを解析したデータがあるのですが、最初の治療から、二次ガン増加までに、少なくとも10年くらいかかり、本当に増えるのは、20年、30年と長期間たってからだとわかりました。
ですから、最初の治療を受けた年齢が若いほど、二次ガンの発生は多くなります。20歳で治療を受けた人が80歳まで生存すると、その間に二次ガンが発生する率は50%ほどになり、一般の発がん率の約2倍です。
これに対して、50歳で睾丸腫瘍の治療を受けた場合には、80歳まで生存しても、二次ガンが発生する率は30%ほどで、一般と5%くらいしか違いません。
また、放射線主体の治療を受けた人の方が、抗ガン剤主体の治療を受けた人より、二次がんの発生が5~10%高いこともわかりました(ただし、発生率は低いですが、白血病が二次ガンとして出現する頻度は、抗ガン剤の方が、放射線の2倍くらい多くなります)。
一般に、がんは50歳以上で発病、治療することが多いので、誘発がんが発症する危険は、さほど高くなりません。しかし、患者さんが長生きするほど、二次ガン発生が増えるのは確かであり、放射線の照射範囲や抗ガン剤の量が増すと、二次ガン発生が増える傾向も明らかです。
ですから、治療の要諦(ようてい)は「必要最小限」。完治が見込める場合こそ、放射線治療や抗ガン剤投与に細心の配慮が望まれます。
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